静岡市の社会保険労務士事務所。助成金、給与計算、就業規則なら河合優一郎社会保険労務士事務所。元SEであり、元ソフト開発会社の人事担当者です。

労働トラブル事例 不当解雇にあたるケース

“同僚と協調性がない”、“注意すると逆ギレする”
こんな問題社員を解雇したところ、「不当解雇」だと主張された。最終的に金銭解決するはめに…

問題社員の解雇

営業の即戦力として採用したCさん。
しかし、Cさんはお客様との約束の時間にたびたび遅れるなどルーズなところがありクレームになっていました。社長や同僚がたびたび注意をしても反抗的な態度をとります。社長は、半年ほど様子をみましたが受注は結局0件。他の従業員との協調性もなく、改善の兆しも見えません。最近ではお客様から、「仕事が雑だ!」というクレームも受けています。やむなく社長は、Cさんを解雇することを決断しました。

社長がCさんに解雇の意思を伝えました。すると、Cさんは会社の不当解雇を主張してきました。

紛争調整委員会でのあっせんへ

Cさんは解雇の撤回を求め、紛争調整委員会へあっせんの申請を行ったのです。
「 紛争調整委員会のあっせんとは、当事者間の話し合いによって紛争解決を図る制度です。
“紛争調整委員会”は弁護士や社会保険労務士などの労働問題の専門家で組織された委員会で、各都道府県の労働局に設置されています。

紛争調整委員会の委員が”あっせん委員”として当事者の間に入り、調整を行いながら話し合いがもたれ、求めに応じてあっせん案の提示を行います。あっせん案に合意した場合は、そのあっせん案は民法上の和解契約の効力をもちます。
社長があっせん手続きに臨みました。

あっせん委員 「解雇をするには、正当な解雇理由と一定の手続きが必要です。御社の雇用契約書や就業規則では、解雇の要件や手続きをどのように定めていますか?」
社長 「・・・・・・。」

ダウンロードした就業規則をそのまま使用

A社の雇用契約書は、インターネットからダウンロードした雛型を、会社名だけ変えてそのまま使用していました。

雇用契約書の「退職に関する事項」の欄には、”詳細は就業規則による”と記載されているだけ。就業規則は、従業員が10人未満であったため作成していませんでした。

解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています(労働契約法第16条)。実務上、就業規則がないと”客観的に合理的な理由”を証明することが困難なため、解雇の正当性を主張することも困難といえます。

結局、あっせん委員からは「Cさんを解雇することは難しい」と言われました。

解雇を撤回して合意退職に

社長は、Cさんと今後一切関わりを持ちたくないと考えており、Cさんも最終的には、雇用継続より金銭解決を希望したことから、結局、会社がCさんに解決金として賃金2カ月相当分の60万円を支払い、解雇ではなく合意退職とすることで決着しました。

結論から言ってしまいますと、就業規則がないと、実務上解雇が困難、といえると思います。
法律上、就業規則の作成義務のない会社の場合は、”就業規則がないと解雇できない”とまでは言えませんが、「解雇の事由」をなるべく明確化しているほうが、解雇の有効性を主張するうえで有利に働くことは間違いありません。
解雇の運用を視野にいれる場合は、最低限、就業規則を作成整備しておく必要があるでしょう。

まとめ

そもそも、従業員を解雇することは容易ではありません。
法律上、会社には従業員を解雇する権利があるのですが、その権利は強く制限されています。
まれに、「30日前に解雇予告すれば解雇できる」「解雇予告手当を払えば解雇できる」と勘違いされている方がいますが、これは誤解です。解雇を行う手続き上”解雇予告”または”解雇予告手当”の必要性はありますが、解雇予告(手当)さえ行えば、解雇が有効となるわけではありません。

解雇の取り扱いは、労働契約法第16条において以下のように定められています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
見て頂いてどのような印象をお持ちでしょうか?あいまいな取り扱いだとお感じになられないでしょうか。
じつは、解雇に関して「こうすれば100%解雇が有効または無効」といった具体的かつ形式的な方法論は確立されていないと言えます。
そのため、解雇の”権利の濫用”をめぐる争いが多いのです。

実務上、解雇が必要な場合には、「”客観的に合理的な理由”があり”社会通念上相当である”」と認められるために必要な様々な要素を、労働諸法令及び過去の判例などから導きだし、できるだけ複合的に押さえていく必要があります。

解雇の有効性を主張するには、様々な要素がありますが、就業規則の存在も重要な要素の一つです。

労働契約と同様の法的拘束力をもたせた就業規則を用いて、
「就業規則●条■項と■項に違反するため解雇します」
と示すことができれば、労使間にとって”客観的に合理的”であると証明する根拠になり得ますが、就業規則がなければ証明は困難です。
就業規則を作成する場合は、会社の規模や実態に合わせて、解雇に該当する規定部分を充分に検討していく必要があります。
就業規則の作成義務のない従業員数10名未満の会社の場合も「解雇の事由」をなるべく明確化しているほうが、解雇の有効性を主張するうえで有利に働くことは間違いありません。