静岡市の社会保険労務士事務所。助成金、給与計算、就業規則なら河合優一郎社会保険労務士事務所。元SEであり、元ソフト開発会社の人事担当者です。

労働トラブル事例 未払い残業の請求|固定残業代(定額残業代)は違法?

固定残業代とか定額残業代で支払いたいが違法なのか?そのようなご相談にお答えします。就業規則に記載したり運用面をしっかり整備していれば有効になりえます。

固定残業代(定額残業代)は違法か?

事例でみていきましよう。

1カ月前に退職したAさんが、未払い残業の件を、労働基準監督署(以下「労基署」)に申告。労基署の労働基準監督官(以下「監督官」)が、調査のために甲社を訪問しました。残業代は「基本給に込み」という約束で別途支給していません。

社長と監督官のやりとり

社長 「面接時に“残業代込み”の給料ということで、本人に伝えています。本人も合意しています。」
監督官 「それでは、時間外労働相当分の金額を明確にできる雇用契約書や、就業規則等の書類がありますか?」
社長 「・・・・・・。」

“残業代込み”という約束は、面接時に口頭で言っただけでした。いままで誰も文句を言う者もなく、社長はそれでいいと思っていました。雇用契約書はインターネットからのダウンロードした雛型をそのまま使用。就業規則は従業員10人未満であったので作成していません。

導入する場合は、しっかりとした運用整備が必要

“残業代込み”(「定額残業制」)という支払い方法自体は違法ではありません。しかし、これが認められるためのハードルは高く、運用には細心の注意が必要です。口頭での労使の合意だけでは、まず認められません。

結局、社長の“残業代込み”という主張は監督官に認められませんでした。

その後、労基法第37条違反(割増賃金を払っていない)で労基署より是正勧告を受け、過去3カ月分の全員分の残業代200万円を支払うことになってしまいました。

今回取り上げた事例は、労基署の調査(申告監督)ですが、未払い残業代の請求は、労基署だけに限りません。
弁護士などを通じて内容証明書が届く場合や、個人で加入できる労働組合から団体交渉を要求される場合もあります。

就業規則は非常に有効なツール、しっかりと明記しましょう

未払い残業代対策を講じる上で、就業規則は非常に有効なツールになります。それはなぜでしょうか・・・。実は、未払い残業代対策に関して「これをやれば100%大丈夫」という方法論は確立されていません。そのため、有効だと思われる様々な対応策を、複合的に組み合わせ、リスク軽減を図っていく必要があります。そこで、就業規則です。

就業規則は、労務管理に関する全ての事項を網羅できますし、適正に作成運用することにより、その内容を労働契約の内容として対象とする全従業員に、画一的に適用することが可能です。

つまり、有効だと思われる様々な未払い残業代対策を、包括的に労働契約の内容とし、法的な強制力を持たせることが可能なのです。では、実際に就業規則を用いることで、会社側にどのようなメリットがあるのでしょうか。

まとめ 

未払い残業代請求に対する、経営者側の主張で多いのが、「残業代込みで払っていた」、「勝手に残業していた」、「管理監督者なので残業代はいらないはずだ」などです。

残念ながら、これらの主張は、ほとんど認められないと考えた方がよいでしょう。

ただし、就業規則を適正に作成運用していれば、上記主張が認められ、残業代請求に対抗できる可能性が出てきます。

実務上は、就業規則や雇用契約書にて「基本給に●時間分の割増賃金を含める」等の必要な取り決めと給与明細に基本給とは別の項目で支給されているなどの運用を行うことにより、定額残業制が有効になり得ます。